4月29日に開催したシンポジウム「沖縄県立美術館のあり方を考える」の議事録が出来ましたのでアップします。
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県立美術館の在り方を考えるシンポジウム議事録(4月29日)
【 第一部 】
<主催者挨拶:石川真生/宮城潤>
石川:
――シンポジウム開催の経緯
今回のシンポジウムは美術館の2代目館長に白保さんがなったことをきっかけに、急遽みんな(美術家、写真家等)に呼びかけて話し合いを持ちシンポジウムを開催することを決めた。直前まで美術館関係者(前県立博物館・美術館館長、文化の杜共同企業体代表、博物館館長経験者、県立美術館副館長、前県立美術館副館長)にパネリストの出演の交渉していたが、参加を全て断られた。しかし美術館の専門家が一人もいないと話にならないので、横浜美術館の学芸員の天野太郎さんに依頼し個人的(個人として)に参加いただいた。
――シンポジウムの主旨
このシンポジウムでは個人を誹謗中傷するような場にするのではなく、自分たちの税金で出来ている美術館がこのままで良いのかと、美術館のあり方を前向きに話し合う場にしたいと考える。そしてただ議論するだけの場ではなく何か成果の出るような中身のある結論を皆さんと成せればなと思っている。
<これまでの経緯と論点>
『「県立美術館のあり方を考える」シンポジウム資料及び経過報告』
安座間安司(美術批評家/元「美術館問題について大いに語る会」代表)
<話し合いの進め方について>
石川:この話し合いは、フロアどうしで話し合って結論を導くぶっちゃけトークにしたい。第一部では問題点を提示。第二部では、前向きに美術館はこういうふうにあったほうが良いんじゃないかという解決策を出し合う。そして最後にこれからどういう行動が出来るか提案が出来れば最高だなと思う。
<問題点の提示>
宮城:これまで色んな議論をし、専門家も意見をしたが県は聞き入れなかった。県の体制、姿勢に疑問。館長の人選方法が不透明、問題がある。
内間氏:指定管理者制度とは?
天野氏:指定管理者は地方自治体の施設に適用される。美術館とは他の公共機関(図書館、博物館)と同様公的サービス。今まで税収で対応してきたが人口の減少に伴い税収も減っている。規制緩和等、公的なサービスを市場(マーケット)として国、自治体が民間に開放した。指定管理者制度を導入した美術館はたくさんあるが、背景としてはこうしたことが上げられる。
内間氏:指定管理者と新聞社の関係が見えない。
天野氏;沖縄の例(新聞社の関連会社)を聞いた時はずいぶん思い切ったことをやるなと。しかし、国立新美術館などは公募展など貸し会場で成り立っている。事実上各新聞社等が企画し、その費用を美術館に払っている。国立の美術館はこれまでそのようなやり方でやってきた。日本の美術館制度は指定管理者制度と近い形で新聞社とお付き合いをしている。沖縄の場合が特殊でもなんでもなくて巧妙な形で行われているというのは間違いないと思う。
参加者:(美術館問題の経緯を振り返り)――委員会で決まったら議会は何もできない。審議はしない。政治的にどこが議案を出してどこが決定するのかで変わる。美術館の管轄が教育委員会から知事部局に変わってしまった。トップをかえなければ解決しないのではないか。
参加者:僕の中でアートとは他人を触発するもの、仲井真さんが白保さんを選んだことをひとつの表現だと考えたらこの場はアートになる(会場に笑い)。しかし、いままで知らない振りしていた自分たちに否がある。これからは館長を変えるだけでなく継続して監視できる美術館であってほしいと思う。
真喜志氏:海外でも美術専門家じゃない人が館長になるケースがある。しかしその場合、経営者としてグッズ開発やお金を集めを考えたりするのも仕事。牧野さんはそのはずだったのにそうした実績も見当たらない。今回、美術の門外漢がトップに言われて就任した。館長として最低限の仕事(学芸員、外部キュレーターの仕事にいっさい口を出さない)をしてもらいたい。一筆書いてもらいたい。
上原氏:美術館ならいろんなコレクションをしてサービスしてほしい。happ(美術館支援団体)の中身がわからない。若い作家の作品を買ってほしい、基金など長期的な計画をしてお金を集められるようにしてほしい。
参加者:一般の意見として美術館の設立理念がわからない。再検討し、県民にアピールしてほしい。
石川:公立美術館の理念とは?
天野氏:美術館の理念は大体玉虫色。日本の美術館は年間毎の理念が無い。海外では具体的なミッションを挙げる(サービス向上など)それをみんなで共有し実行する。美術館には国家が国民を陶冶するところ、愛国心を植え付けようとしている装置としての機能が一方ではある。制度としての美術館とアートのそれとは決して婚姻関係ではない。まずそれを前提として認識してほしい。
宮城:ではそれを前提として具体的に県民は美術館とどう向き合うべきか考えていかなければならないと思いますが、、、。
小林氏:美術館建設前に掲げた基本理念がある。①人間復興。 ②未来への展望。 ③地域性・国際性。
理念3つを実現するために細かく計画があった。現在は無視した状況。意見としては外から監視していくシステムを作る必要がある。内部から外部委員会を持っていくように持っていけたら。happはご意見番として機能していってほしい。
天野氏:監視には注意が必要。監視委員会は制度として入れないと大変なことになる。新しく外部委員会を入れて、意見を言うとそれをするために指定管理者の業務が増えて別でお金が発生してしまう。中身も不透明になってしまう。
小林氏:この館は指定管理者と県の職員がやることが別れていて複雑になっている。評価委員会は県の職員に対してたてるべきだという意見だ。
宮城:評価委員会を設けるとき、基準を明確に作るべきだと思う。心配なのは展覧会の中身じゃなくて入館者数だけが一つの基準になってしまう。今年はウチナーンちゅ大会がある。演劇などイベントをしただけで人が集まる。それだけでなく中身がどうなのかをしっかり見ていく必要がある。
石川:ここで第一部は時間切れとなりました。第二部は国吉さん(happ理事)からhappについて説明してもらいます。
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【 第二部 】
<アンケート結果報告>
※アンケート資料は要約になっていますが、シンポジウムでは全文代読しました。
<フロアートーク>
国吉氏(happ理事):美術館が出来る前は、もともと沖縄県立現代美術館支援団体happという任意団体(NPO団体)であり、独立した団体ではあるが文化の杜(指定管理者)から委託を受けて展示交流員の派遣等の業務をしている関係でここに事務所を借りている。文化の杜、学芸員、happの三者会議を立ち上げたが今のところ定期的な会議を持てていない状態です。今、新都心通り会と美術館とで講演会、商店街のお祭りなどの企画で何か出てこないかと考えている。美術館を監視する制度はいいが今のhappでは出来ない。時期早々である。
参加者:県が作ろうとしていた美術館とみんなが作りたいと思った美術館とがブレている。行政の都合で複合施設になってしまった。トップに政治家がついたが右往左往するはめに。生きた美術館を運営するために必要な館のトップがビジョンを持って外の人と交渉することができない。アドバイザー会議が機能してない。美術館の展示とデパートの展示は質が違う。美術館がデパートの展示会にならないように見ていく必要がある。
宮城:第一部で出た問題点を整理して話しをすすめていきましょう。(問題点整理)
参加者:今日参加したのは美術館の専門の話を聞きに来たのではない。話したいのは、前館長は作品を削除し今回は特定政党を持っている人が館長がなってしまったということ。政治的に歪められてしまう危険はないのか。その意見を出してほしい。
参加者:県の施設だから制度の中で運営されている。制度を変えるよう県議会などに働きかけないといけないのでは。県の施設だからこそ、制度を変えて県民に反映させないといけない。happの活動は市の取り組みとしてはわかるが県の取り組みとしてもっと広く扱ってほしい。
石川:館長人事についてもっと意見を言えというのはあたっているし、私もわじわじー(怒り)もしてる。しかし作家、一県民の立場として提案していこうと思ってる。抗議団体を作りたいという人は自由にやってかまわない。ここに集まった人それぞれの持ち分で提案していってほしい。それぞれが広げてほしい。私はこれからの美術館の在り方を考えようと次の世代のためにやっています。
<問題解決に向けて>
石川:ここからは、第一部で出た問題にそってこれからの解決策を中心にしゃべっていきたいと思う。ひとつには、今回震災がありました。これから経済が崩壊して美術館運営も激しくなるだろうとシビアに見ている。現実に横浜美術館は放射能の影響でソビエトからの展覧会が中止になった。こうした震災後の美術館の行方について天野さんに話してもらいたいと思います。
天野氏:今までのように官が何かをしてくれるというのはこれからは無理だろう。あたりまえだったことがあたりまえじゃなくなっている。自治体の税収も確実に落ちていくだろう。例として、かつて産業のなかったシンガポールは官民一体で取り組んで徹底的にアジア美術の中心になろうとしている。しかし経済は成長するがシンガポール的歴史が犠牲となる。国は生き延びるが文化を守ることに困難が伴う。シンガポールはそれを選択した。これはよその国の話ではない。台湾は逆に徹底して民でやっている。美術館をまったく信用してない。自分たちでインフラを作り若いアーティストが世界中に出て活躍し、国にもどり次の世代を引っ張っている。これを見たとき日本は今まで何をしてきたんだろうと。みんなで文化を支えて、これまでのように官に頼るのではなく自分たちの社会の基本構想を根本的に見直し体制を考えることが必要だと思う。
石川:これからは県に提案していくものとして具体的にどうしていくか考えたい。意見はどうでしょうか。
参加者:美術について素人だが、最初から不思議なのは何故博物館と美術館がひとつになっているのか。お年寄りとここにくることがあるが彼らの頭の中には美術館という意識がまったく無い。美術館の独立性が欠けている。もっと美術館と博物館は違うんだというふうに世論を作っていけないかなと思います。
上原氏:今話がでたように、美術館、博物館それぞれ質が違うので独立した館長、副館長を求めるべき。行政、県民も混乱している。その違いをきちんと提示すべきだと思う。
参加者:今回のシンポジウムは主催者が良くやってくれたと思う。シンポジウムをやったと言う事実、これが大事。反応を絶えず示すという方法は有効だと思う。happは県民からの意見を集めて美術館に提案してほしい。
宮城:天野さんがおっしゃったように自分たちで取り組んでいくことも必要だと思うがそれだけでなく、行政に陳情とか要請以外にもチェック機能や評価委員会を設置して行政に食い込んでいくこともやっていかなければいけないのではと思う。この場が話し合いだけで終わったらこれまでと何も変わらないので次に繋がるような提案が出来ればと思うが、、、。
国吉氏(happ理事):市民が喜んでお金を出せるような仕組みを作りたい。美術館が面白いということを市民にわかってもらえば協力してくれる。冊子を発行して館長談話を出していけるようにしたいが現状では財政的に厳しい。でも今日の話し合いでやる必要があると思った。理事会で提案をする。天野さんがおっしゃったように美術館を市民が運営していく気概を見せたい。去年やった県民キュレーター展は継続してやってほしい。
秋友氏(happ理事):三者会議を月一回やるので持ち帰って反映させられたらと思います。
参加者:作る人、観る人をつなぐところが美術館。作る人、観る人の理想の形が違うかもしれないがそれぞれが話し合って接点を見つけてれば沖縄県立美術館としていい方向性を考えていけるんじゃないかなと思う。
真喜志氏:日本の経済は右肩上がりではない。米軍に払っている思いやり予算を福島の復興に全て使うようにする。博物館・美術館は即廃墟にして基地が全て返還されたあと祝祭として美術館を作ろう。100年あとに美術館を作ろうという方向で持っていこう。
男性:一市民が自称「沖縄県立美術館評価委員会」という名称の団体を作って意見を言うのはどうか。
宮城:県民が直接話し合える場を作ったほうがいいと思うが、その辺はどうでしょう。
高良氏:三つの意見。ひとつはこれまで問題が起こった時にその都度つぶしていけたか?ということ。アトミック・サンシャインの件では他の作家も作品を引き上げてほしかった。今回は館長人事を正常化するための陳情書を出すこと。次の館長人事に引っ張らないよう徹底的にやること。ふたつめは美術館の中身を充実させるためのアーティストはどう行動するのか、私たちは固唾を飲んで見ている。美術館問題を考えるアートの作品展をやって見せてほしい。芸術でこの不条理を表現してほしい、、、。
佐久本氏:美術館の館長のことをしっかり考えよう。前館長に韓国の美術館との交流をつぶされた経緯がある。対外的に恥ずかしいことをしている。自由に表現できる体制を作ろう。
高良氏:三点目は過去に解決できなかったことは流さないで何度も問い直す。一つは牧野前館長の業績を検証するシンポジウムをする。二つ目は「語る会」の委員会を呼んで今どうなっているかチェックを行う。沖縄の知性を代表する方々、学識経験者の意見で美術館は出来ているがその結果はどうなのか、県民が納得してるかみんなの前で議論したい。予算の監査委員会、評価委員会の委員は美術館がどうなっているか検証をやらなければいけない。
内間氏:沖縄の現状を見ると疑問がいっぱいある。これまでの問題が解決されないまま終わらないようにやらないと意味が無い。行政を当てにすると予算に左右されるので、予算をあてにしないで、自分たちで美術館を作るくらいの勢いでそこに情熱を注いだほうが良いのではないかと思う。でも言うべきことは言う。一般の人も意見をもって行動していくことが大事だと思う。イギリスから沖縄に戻って思ったことは、文化ありきで芸術アートへの意識が薄い。その意識からまずは変えて行きたい。
参加者:作家組合ってあるのか?それがあると影響を強く持つことができるのでは?今後の選任方法を提案したほうがいいと思う。
宮城:アーティストの組合は無いと思う。
安座間:学芸員の組合も無いと思う。
石川:アトミツク・サンシャイン展の反対は動いていたんだけれど不発に終わった。館長と話し合いがしたいと学芸員をとおして伝えていたけれど日程の都合や返事を待っている間に気づいたら牧野さんがやめていた。私の不備もある。今回声をあげたのはあのとき機会を逃してしまったとことがあるからというのもある。――一つの提案として今日でた意見、県民の声をいまある団体を使って伝えていきたい。happさん発奮してほしい。
上原氏:happの話をする前に、美術館の制度の問題。名前が博物館・美術館になっている。県立美術館というのは存在しない。この意味をちゃんと理解してほしい。独立した県立美術館がほしい。
石川:今後どうして県に届けるか?どうするか?具体的に提案してほしい。
倉成氏(壺屋焼物博物館学芸員):壷博では「評価指数」についてのシンポジウムを開催予定していた。当初、「博物館と評価」というテーマで入館者数ではない評価の仕方なども考えたいと思っていた。
天野氏:具体的には何を提案する予定でしたか?
倉成氏:今はまだ決まっていないが市民による評価を聞きたいと思っている。ボランティア、町民会長、壺屋焼博物館周辺の人も呼ぶ予定。那覇市の行政経営課(博物館の評価を決めるところ)の職員も引っ張りだしたい。
宮城:アイデア、提案等ありますか?
水上氏:感性を高める場が美術館。文化に感動する権利が僕らにはあるとおもうし、守る権利もあると思う。
石川:県民、作家、美術館、県で話をする機会が欲しいけど、それは今無理そう。仲介者としてのhappにがんばってほしい。出来ますか?
国吉氏:私たちは美術館の施設の中でただで利用させてもらってるので立場上過激な発言は厳しい。どういう意見を館長は持っているのかを引き出すことは可能なはず。今出来ることはそれぐらい。
(中略)
石川:時間になってしまったので最後に横浜から来てくださった天野さんに一言お願いします。
天野氏:今日、この場にこれたこと光栄に思ってます。ありがとうございました。私にとってはふたつあって、美術館を求めている市民がいて、美術館はこれから地域との連携がますます必要になっている。しかし一方で一番嫌がるのは学芸員。学芸員が一番保守的。公的サービスをてんこもりにしないといけないし仕事が増えるから。なので提案としてお互いに大義名分を共有する。美術館と市民の間で「きちっとサービスしていこうよ」という大義名分を共有する。市民はしてほしいプログラムを学芸員に提案し、お互いに共犯関係を作ることが大事だと思う。そうすることで自然と美術館問題が浮かび上がってくる。今はそれが出来ていない。サービスをしてないから、逆に一緒にやろうという提案が美術館を育てると思う。
<終了>
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